技術文書とは、当該製品が低電圧指令の要求事項に合致していることを裏付ける資料です。 したがって、当然ながら適合宣言に先立ち準備されていなければなりません。技術文書の基本概念については、「技術文書の作成」をご参照ください。
低電圧指令の技術文書は、指令の付属書4の3項に記載がありますから、これに従って作成します。
同項の記載要求は以下のとおりです。
● 製品の一般的な説明(製品概要)
● 基本設計、生産関連図面、回路図/構成品/部品などの構成
● これら図面や製品の操作を理解するための説明
● 適合証明に用いた規格のリストや、規格を用いなかった場合はその方法
● 計算結果、試験結果、構造写真など試験レポート
※これら書類は、生産中止後10年の保管が要求されます。
「製品の一般的な説明(製品概要)」には、一般的に取扱説明書が該当します。特殊な製品において、取扱説明書でその概要を説明しきれない場合には、別途、説明する資料を用意します。
各要求に応じられる書類が無い場合は、新たにこれを作成する必要がありますが、図面類に特有の記号や表現を用いる場合は、それを説明する記述も必要です。IEC規格やISO規格に規定されていない記号や表現を使う場合は特に注意を払わねばなりません。
製品評価時には、適用規格の選定にも気をつけなければなりません。規格は改訂されますし、失効します。すでに失効した規格を適用して評価しても、指令に適合したとは言えません。ですから、欧州官報(Official Journal)を参照し、また、これに関連した情報を収集した上で適用規格を決定することが重要です。
指令には、細かな評価方法が書かれていないため、通常、これに整合させた整合規格(Harmonized Standards)の要求を満たすことにより指令への適合確認を行います。一方、整合規格が無く、独自に評価した場合は、その方法を詳細に記述しなければなりません。独自の評価といっても、その根拠が問われることになりますので、国際規格や各国の規格を採用した科学的、技術的理論の裏付けがとれる方法で行うことが鉄則です。
製品評価の結果は、テストレポート(Test Report)としてまとめられます。試験の再現性の必要性から、テストレポートには、各要求事項に対する結果のほかに、いつ・どこで・だれが …といった内容を記載しなければなりません。試験日、場所、試験員、使用測定器、測定器の有効性、温度・湿度・気圧などの試験環境といった情報です。当然ながら、試験した者の署名や、試験結果を検証した者の署名も必要です。
写真などは製品の内容を説明する有効な手段であるので、適合評価に用いた製品の写真などの保管をお勧めます。通常はこの写真はPhoto documentationという形で試験レポートの一部になります。
技術文書の管理にはさまざまな方法が考えられますが、モデル毎に1冊のファイルにまとめ、管理するのが理想的な方法と言えるでしょう。万一、当局より要求された場合には、速やかにこれを提出することが要求されます。当局から提示が求められる場合とは、事故が発生した場合や、製品に問題があると疑念が生じた場合が考えられます。そうした時に、これら技術文書は、「物言わぬ弁護人」の役割を担うわけですから、当事者以外でも分かるような記述方法が要求されているのです。
また、すでに適合性を確認した製品の設計を変更した場合や、既存のモデルを基に新モデルを作る場合においても、適合性を検証し、その記録を残さなければなりません。この場合、土台となるモデルの詳細を記述した技術文書に変更部分に関わる記述を追加する方法で、技術文書を作成することができます。
大切なのは、「安全な製品を供給する」ことです。技術文書は、安全な製品を供給する過程において、必要に応じて作成されるものですから、規格や指令の項目は必要最低限の要求だと考え、一つひとつの書類を確実に整えることが重要です。
適合性確認を自己宣言という手段で行う場合、また、規格に習熟していない場合などは、試験機関、コンサルタントに相談したほうがよいでしょう。自己宣言だからと甘く見ず、経験豊富な専門家の指示に従った慎重な取り組みをお勧めします。


