電気用品安全法 - リコール製品のメーカーが倒産していたらどうなるのか?


リコール製品のメーカーが倒産していたらどうなるのか?

こんにちは PSEジャパン の櫨山です。

マンションを経営している友人からこんな相談を受けました。

自分が所有するマンションに設置している電気コンロ(クッキングヒーター)がリコールの対象になっている。しかし、このメーカーはすでに倒産しており、管財人からリコールと製品の取り扱いに関する注意が記された手紙が届いた。修理や代替えの方法も見つからず途方に暮れている、という内容です。
すでにリコールが出されている製品であり、倒産している会社ですので、名前を挙げさせていただきますが、これは株式会社萬品電機が製造したラジエント式クッキングヒーター。4モデルがリコールの対象であり、6月24日のリコールからわずか一カ月ほど経った8月1日付で萬品電機は倒産しています。(プレスリリースでは、リコールが原因の倒産とされる。経済産業省の発表によれば、7月26日に事実上倒産。)
リコール理由は「外部からの電気的ノイズ又は操作部への水分等の浸入によりスイッチが入り、こんろの上に置いていた可燃物が焼損する恐れがあることが判明したため」としています。
(経済産業省-製品安全ガイド-リコール情報より)http://www.meti.go.jp/product_safety/recall/file/080624-1.html
今回、特に、ご注目いただいきたいのが、最初の理由に挙げられた「外部からの電気的ノイズによりスイッチが入り…」というところ。つまり、目に見えないノイズが悪さをして電気コンロのスイッチが勝手に入ってしまうということです。
製品安全の観点から話をしますと、これはEMC(電磁共存性)のうち、EMS(電磁波に対する感受性=イミュニティ)に起因する事故であるといえます。電気機器からは多かれ少なかれ電磁波が出ています。実は、この電磁波が互いの電気機器に影響しあい、誤動作などを起こす原因となるのです。
こうした電磁波による電気機器への互いの影響を防止するために、EMC試験を行います。 EMCEMIEMS(電磁波に対する感受性=イミュニティ)という2つの概念に分かれます。EMI試験では機器から発生する電磁波(ノイズ)を測定することにより、これが他の機器に影響を及ぼさない規定限度内に納まっているかを確認します。一方、EMS試験では、一定のノイズを機器に印加することで(模擬環境を作り出す、機器が誤動作しないかどうかを確認します。)
8月1日に萬品電機の管財人により発行された「リコール製品のお知らせ」によると、リコール対象モデルの4モデルのうち、2モデルについて、今年1月10日以降に製造された製品は、「JIS C 61000-4-4」に適合しているとされます。http://www.manpin.co.jp/images/oshirase080804.pdf
この規格は、EMSの「EFT/Burst(電気的ファーストトランジェントバースト)」です。ということは、今回の不具合とされる「外部からの電気的ノイズ」とは、シャワリングノイズなのでしょうか。
ある機器のスイッチやリレー接点開閉時に発生したシャワリングノイズが、商用電源を伝わって、その電源に接続される電気コンロに誤動作を及ぼした…ということになるのでしょうか。
残念なことに、電安法の多くの技術基準ではEMS(イミュニティ)の規格が導入されていません。
 
先の6月17日付けで出された 電気用品安全法 省令第2項技術基準の改正では 多くのJ-IEC技術基準が最新のIEC規格にあわせて Up Dateされました。
改正された基準の詳細はこちら:
折角IEC国際規格に準拠していながら、いつも最新のIEC規格に追いついてないのがこのJ-IEC技術基準(省令第2項技術基準)の実情です。
このたびの省令第2項技術基準の改正でようやくJ-IEC60335-1(H20) – 家庭用及びこれに類する電気機器の安全が最新のIEC60335-1 第4版(国際規格)に準拠しUP Dateされました。 しかしながら、最新のIEC60335-1規格ではAmendment1, Amenndment2が存在しますが、今回の省令第2項技術基準の改正でUp DateされたJ60335-1(H20)にはAmendment1, Amenndment2は含まれていません。
実は、IEC60335-1ではAmendment1, Amenndment2ではEMSの「EFT/Burst(電気的ファーストトランジェントバースト)」の試験要求が含まれているのです。
電気用品安全法 省令第2項技術基準はEMS(イミュニティ)の面でIECにまだ1歩遅れをとっているということでしょうか?
機器から発生するノイズレベルが制限されているのみです(つまりEMIの要求)。しかし、こうした事故が現に発生しているわけですから、EMSについても早く強化しなければなりませんね。
ところで、話を戻して私の友人の悲劇と言えば…。
メーカーはリコール倒産してしまったわけですし、住民に正直に通知するやいなや、私の友人のもとには、住人から「どないなっとんねん! 食事が作れないから外食代を払え」とか、「子供が栄養失調になったらどうするんだ!」などと、すべての責任をに押し付けてくる「モンスター住人」からの抗議が今も続いています。
ようやく、管財人により、交換に応じることのできる業者が発表され、友人もこの業者に交換を依頼するそうですが、(類似の他社製品に交換。つまり、新品の購入です。)もちろん費用は友人が負担しなければなりません。
「昔なら、『何を寝ぼけたことを言ってるんですか。まさか電化製品のスイッチは勝手に入らないでしょ!幽霊の仕業じゃありませんか?』ですべてが片付いていたよねぇ」と、友人。
確かに、EMCの概念が全く知れ渡っていなかった頃、「幽霊」もとんだ濡れ衣をかけられていたのかもしれません。 
「うらめしや~」・・・
 

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