2010年8月


 

こんにちは、PSEジャパンの櫨山(はぜやま)です。
 
まだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
 
早速ですが、本題に。
本日は、電気用品の決め方について。
 
電気用品安全法への取り組みを進めるうえで、最初に行うのは、その製品が電気用品かどうかという判断です。その先のベクトルが決まる大変重要なステップです。
 
しかし、この電気用品の対象・非対象の判断が、取り組みにおける本当に重要なステップでありながら、現在の電気用品安全法で、この決め方が非常に不明確であることは全く悩ましことです。
 
「ポジティブリスティング」と「ネガティブリスティング」という言葉を聞いたことがありますか?
 
現在、日本を含むアジアの近隣国では「ポジティブリスティング方式規制」がとられており、あらかじめリストアップされた規制品目に該当するかどうかで、製品の対象・非対象を判断します。
 
例えば、ACアダプタがその当該製品としましょう。
あらかじめリストアップされた品目の中に該当するかどうかで、電気用品安全法への対象・非対象を判断した結果、「直流電源装置(電気用品名)」として規制を受ける対象になるのです。
 
一方、欧米諸国などでは、「ネガティブリスティング方式規制」が採用されています。すべての製品は安全であることを前提に、非対象製品(例外事項)をリストアップします。
 
電気用品安全法において、どうみても、誰がみてもわかりやすいコーヒーメーカーや掃除機なら、その対象・非対象に悩まずに済みます。しかし、グレーな製品というのがたくさん存在し、これが誰もの頭を悩ませる大きな問題なのです。
 
例えば、こんなケース。
 
プリキューブ(自分の顔がプリントされたお面を着せかえの要領でキーホルダーにはめ込んで楽しみます)と写真屋にあるデジカメプリント。
 
さて、この2つの製品、何がどう違うのか?技術的にいえば、電気的、機械的にはほぼ一緒。でも、両方が同じ電気用品になるわけではない。
 
一方は対象外で、一方は自動販売機。いったい何が違うというのか? 
プリキューブには遊戯性を認めており、さらに遊戯盤の中でもLCDを搭載しているので対象外。デジカメプリントはプリントシートを売っているのだから自動販売機ということらしい。
 
デジカメプリントで遊ぶ奴もいるのではないのか?いや、プリキューブでまじめに奇跡のワンショットを狙い、その「お面チップ」を購入してキーホルダーにはめ込む乙女もいるのではないのか?というのが、これを造ったメーカーの技術者の疑問であり、技術者としては、これが非対象だからと易々と喜べないところもあったわけです。
 
また、対象であるとわかっていても、電気用品名に翻弄されて前に進めないというケースも。電気用品をはっきりさせなければ、個別事項が異なる。また、要求事項が異なる可能性があるのです。
 
メーカーにとっては大きな問題であり、AまたはBと判断されたことにより設計を変更しなければ技術基準に適合できないという問題も生じます。Aには許される設計でも、Bには許されない。ただ、その分かれ目は非常にあいまいなものであり、ほとんどが、「エイヤァー」というこじ付けと「こねくり回した」理由で決定されるわけです。
 
さらに、一番厄介なのは、まったく同じ製品でも用途によって運命の分かれ目ができるケース。
 
同じ直流電源装置を、どの製品に、どの場面で使用するかにより、「一般工作物」またはそれに接続するかどうかを判断され、対象/非対象が決まるのです。電気的に、機械的には全く一緒でありながら、対象/非対象の分かれ目ができてしまいます。
 
他社の製品は、もろもろの理由で「非対象」だといわれたのに、なぜうちの製品は「対象」なのか?という疑問が残ります。
 
なんとも、理解しがたい話です。
 
しかし現在、一番私が頭をかかえているのは、この対象/非対象の判断基準…?
というよりは、迷った時に、①誰が?②どう判断するのか?ということ。
 
まず、あなたが判断に迷ったら「しかるべき」ところに相談に行くべきでしょう。
その「しかるべき」というのは、経済産業省もしくは地方局。
次に、考えられるのは登録検査機関です。
 
ただ、あなたもご経験済みのとおり、本省と地方局の見解が違うどころか、登録検査機関までも見解が違う。じゃあ、いったい、誰のいうことを聞けばいいのか?
 
経済産業省や地方局に問い合わせても、紙切れ一枚の証拠も残りません。
次に聞いたら違うことを言われたという人も実際にはいたりして、一体どうしたもんかと頭を悩ませます。
 
登録検査機関の中には、技術相談として有料で判断を述べているところもありますが、それはあくまでこれまでの経験や、判定事例をもとに判断した結果であり、やはりその最終的なご判断は経済産業省にあるとしています。
 
たとえ登録検査機関が判断に迷って、これを経済産業省に聞いたとしましょう。その2者間も口頭の確認だけですから、やはり相談者にとっては登録検査機関からの紙の回答が頼みの綱になるわけです。
 
しかし、相談者が直接に経済産業省に問い合わせた時と、登録検査機関の判断の内容が違うとする。
 
登録検査機関は、経済産業省に聞いたのだから間違いないという(だが、経済産業省に聞きましたと書き残すことは断固拒否。)。
 
いったい、誰が正しいのでしょうか?
いや、いったい誰の言うことをきいておけば正しい「立ちまわり」なのでしょうか?
 
対象/非対象の判定に限らず、経済産業省に判断を委ねるとします。
登録検査機関ではAという見解だった。 しかし、経済産業省ではBと言われた。
 
「実は、登録検査機関ではAと言われたのですが…」
 
だけど、一蹴にして言われてしまうわけです。
「登録検査機関がそう云ったといっては、問い合わせてこられることもありますが、指針を示すのは私ども経済産業省です」と。
 
事実、先日、大阪で行われた経済産業局の一部改正技術基準改正の説明会では、質疑応答でそのようなやりとりがあり、質問者が持ち出した登録検査機関の判断がひっくり返された場面がありました。(私は私用による欠席してしまったのですが、参加した弊社社員によれば…)
 
恐らくそこにいた大多数が登録検査機関の判断に妥当性を感じていたことから、また、そのように技術基準の改正を読み込んでいたことから、大勢が困惑したというのはいうまでもありません。
 
こうなれば、登録検査機関も度々の見解に過度に慎重にならざるを得ませんよね。判断を間違えれば、えらいことになる(?)
 
いや、判断の足並みを合わせられなければ、えらいことになるという理由で躊躇することになるのです。
 
私は、絶対に、対象/非対象の判断は避けたいと思っています。だって、いつ梯子を外されることか?何も証拠が残らないのに、私がその責任を一手に負うのはあまり恐ろしい。
 
技術的に納得いかない判断でも、お上が左といえば左に。右といえば右に。はっきり言って、登録検査機関でも対象・非対象の判定は、一番やりたくない業務だと思うのです。不本意にもリスクは十分に高いですから。
 
民間どうしの争いというのは恐ろしいのですよ。
 
どう考えても「対象」だと思われる製品を評価していたら、ある日突然、他社の類似製品が、なんだかんだの経済産業省のご判断で「非対象」になった。
 
「非対象」の製品を対象と判断して長々と引っ張ったのだから、その間の損害賠償しろ!非対象の製品にNGまでくらわせて足止めさせた。他社に販売の遅れをとったじゃないか!
 
と、登録検査機関にお金を請求になるお客さまもいらっしゃる…いや、実際にいらっしゃたわけです。
 
「うちの製品がNG?おまえらは非対象の製品に文句つけてきたじゃないか?訴えてやる!」
 
と、逆に怒られたりして?。
 
2社の登録検査機関が別々に経済産業省に問い合わせて、別の異なる結果を得てしまった。さぁ、大変というわけですが、どう決着をつけるかは、民間どうしの話合いに委ねられます。
 
経済産業省にて判断に迷う場合には、非公開で行われる「判定会議」で議論します。登録検査機関と経済産業省の担当者が集まって定期的に議論するわけですが、ここでの判定がタイムリーに公開されるわけではなく、また、その公開内容における情報が少なすぎて、判定事例と自社の製品が同じかどうかを判断できるレベルではない。 (昔と比べれば、昔は公開もされてなかった訳ですから、最近のはずいぶん良くなった訳ですが・・・・)
 
もちろん判断には会議の日を待たなければならず、メーカーはざらに1ヶ月は待たされるわけです。
 
あぁ(悩)…どうしたものか?
 
さて、さて、ここまでは、私だけが知っているというような、得意げな書き方をしましたが、実は、こんなこと、最近の経済産業省はすでにお気づきであり、制度の改正を打ち出されております。
 
経済産業省では「ポジティブリスティング化」による弊害をすでにご認識になったうえで、「ネガティブリスティング化」にしようという指針です。
 
ポジティブリスティングでは、あまりにパッチワークな作業が多すぎる。毎回、対象/非対象に頭を悩ませる。それならいっそ「ネガティブリスティング化」にしてしまおうということです。
 
「全ての製品は安全であること。」とし、「ただし…」に続く例外製品をその都度決定するというものです。
 
これには私も大賛成!だって、今の制度ではあまりに不公平が多すぎる。
これが本当に非対象かよ?と思う製品がいかに多いことか。消費者の安全を考えるなら対象にしたほうがいい製品が「わんさか」あります。
 
早く、ネガティブリスト化してもらえませんでしょうか。
「安全ありき」で物事を考えたいものです。
 
もちろん、大前提として、逃れる人間を見過ごしてはならない。しかし一方で、制度のひずみが、熱心に取り組む人間の障壁を絶対に生んではならないのです。
 
事業者には技術基準には大いに頭を悩ませてほしいというのが私の意見。
当然、私もフルに悩みます。
 
しかし、本筋から反れるところで制度の弊害が「民」を苦しめていては、日本の技術の未来は開けない。
 
だって、あなたもそう思いません?
テクノロジーの商品化は、常に時間との戦いなのですから。「Time is money」
 
最後に…。
 
ただ、これほど輸入事業が増えてまいりますと、慎重にネガティブリスト化の検討を行わねばなりません。制度の本質をひとつも理解しようとせずに、ここに述べる言葉の弊害だけを取り上げて、規制緩和を求める声も聴こえてまいりますが、現状の輸入品の品質レベルを考えて、規制緩和には全く賛成できませんね。
 

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